相手を深く理解したいと願うのは結婚の有無の関わらず恋愛中の人なら誰しも同じだと思います。付き合いの中で「自分をよく理解してくれている」という意味のことを言われれば、嬉しくもあり誇らしくもあるでしょう。
私はTくんにとって一番の理解者の一人だったろうと思います。ただ、彼は、理解されている=すべて受け入れてもらえている だと思っていたようです。
んなわけ なかろうが!
それでも彼は電話をしてくる
9年を越えた頃にたまり溜まった不満を罵詈雑言と言ってもいい言葉で彼にぶつけた私は、さすがにこれで関係が切れるだろうと思いました。
私の中では、『別れる』というのは男女の情愛がからんでる間柄の解消を指すものという認識なので、恋愛感情がなくなった今、つながりを絶つことに『別れる』は当てはまりません。
以前親しかった友人となんとなく価値観が合わなくなって疎遠になっても改めて「友達でいるのをやめましょう」とは言わないようなものです。
というわけで自然消滅上等!
しかし、しばらくするとTくんは何事もなかったように時々電話をしてくるようになりました。
あんだけのことを面と向かって言われてもまるで堪えてない様子に、いったい頭の中はどうなってるんだろうと思いましたが、電話越しであれば無害です。
私はさほど面白くないあれ買ったこれ欲しい話を半分聞き流しながら相槌を打ってました。
後から思えば、この時はっきり突き放してしまうべきだったのかも知れません。この後私は、文字通り呆れてモノが言えないという経験をすることになります。
10年超前期 それを私に言うか?!
Tくんは迷走し始める
ある日、いつものように自宅で仕事をしてるとTくんが電話をしてきました。
Tくん:オレな、会社変わろうと思う
なんでも全国に支社がたくさんある大手の同業他社に変わって男としての力試しをしてみたくなったのだとか。今までそんな男気ちっくなことを言ったことがない人なので、ちょっと意外に思いました。で、私は占いが出来ますから、ちょっと占ってみてくれとのことでした。
占った結果、今年は離婚話が出かねない年回りだし経済的な損失の暗示もあるから、動き回るときじゃないと出ました。
その通り伝えると彼は「うーん、そうかぁ」と言ってましたが、それからほどなくして15年勤めた会社を辞めて大手に入社しました。
ところが、入社1ヶ月で彼は大手を退社してもとの会社に戻ってきました。なんでも新入社員は恐ろしいほど仕事がなく、出社しても何もすることがないことにたまりかねての退社とのことでした。
「まぁ元の会社に戻れてよかったじゃん」と言っておきましたが、本音は「ばっかじゃねーの?!」です。
その後Tくんは隣の県からの帰りだと言って何度か電話をかけてきてました。元の会社に戻れて県外出張が増えたんだなと思ってました。
意外すぎる告白に目が点になる
そんなことが3ヶ月くらい続いたある日、なにやら深刻な様子で電話がかかってきました。
Tくん:お前にしか話せないことだからちょっと出てきてくれんか
私:電話じゃダメなん?
Tくん:長くなるから。お前に聞いてみたいことがある
何だろかと思いつつ出かけてみると、8人乗りのばかでかいぴっかぴかの新車に乗ってました。
彼の話はこんなところからスタートしました。
・元カノは今は隣の県に住んでいて、バツ1で男の子が二人いる
・久しぶりに会って身の上話を聞いていたらすごく苦労させられていたようだ
・聞いてるうちに可哀想になってオレが守ってやらなきゃと思ってしまった
目が点になるってのはこういうことかと思いました。
確かに私たちはとっくに好いた惚れたの間柄ではなくなってはいます。でも、だからってそんな話を私にするか?!
つか、こいつは元カノと会った帰りに私に電話してきてたってことか?何考えてんだ???
そんな話聞きたくもないわ!と帰ろうかと思ったのですが、まだ私が彼に気があると勘違いされるのもシャクだったのでちゃんと聞いてあげることにしました。
Tくんの話は続きます。
・一緒に暮らすことを考えて隣の県に支社のある大手会社に移り、みんなで遊びに行けるように大きな車を買った
…別に今さら誰と付き合おうがどうでもいいんだけど、正直面白くはありません。私、こんなに大事に思われてなかったし!つい「ずいぶんとご熱心ですこと」と嫌味が口から出てしまった(苦笑)
切々と話すこと1時間あまり。私は、面白くはないけど嫉妬心は沸いてきませんでした。どうやら私の頭は極めてドライに出来ているようです。
全幅の信頼のもとに私は「親友」になったらしい(涙)
彼の話の本題はここからでした。
・なんとなくカノジョの行動が怪しいと直感的に思い、携帯のメールを見たら男から「○時に迎えに行く」というのが来ていて、それに「分かった。」と返信していた。
・問い詰めたところ「会社の飲み会の話だ」とかわされたが疑わしい。
彼はわざわざ自分の携帯に転送したそのメールを私に見せ、嫉妬に狂う顔で
「お前どう思う?これ、絶対ヤッてるよな?」
はぁ??
私:ねぇ、なんでそれを私に聞くわけ?
Tくん:お前は親友だから
一体私はいつからこんなあけすけな話を聞かされるような親友になったのでしょう。神様教えてください(泣)
しょーがないので信頼に応える
Tくんは「こんな話、お前以外に聞いてもらえる人はいない」と言いました。
もし彼が私をはなっからバカにして新カノの話を聞かせていたのだとしたら、嫉妬心めらめらのみっともない顔なんぞ見せなかったと思います。だから彼はどうすればいいかわからず本気で私に相談したかったんでしょう。
そういう部分をさらけ出せる程度に「信頼」されていたんだろうとは思うし、それはまだお互いが手探りで付き合い始めた頃に手に入れたいと思ったものだったかも知れない。
長いこと付き合ってきて私はそれを手に入れたのでしょうが、かつて期待したほどおいしいものじゃなかったというね(苦笑)
幸か不幸か、私は嫉妬や不安で混乱している人の気持ちを整理して落ち着かせるのに長けています。
内心もンのすごくあほらしかったのですが、まだ気があるため嫉妬していると誤解されないように細心の注意を払いながら、客観的かつ理論的にカノジョさんのものの考え方にやや病的な部分があることを指摘しました。
私:このカノジョさんって、なんでもかんでも人のせいにするのな。
Tくん:…確かに。言われてみればそうだ。
私:カノジョさんがそうだと断言はしないけど、世の中には可哀想な自分アピールで相手を身動きつかない状況に追い込む人がいるもんだ。君、追い込まれてないか?
Tくん:…。
私:なにより、昔私が惚れた男がなんてザマだ!心底情ないわっ!
私は捨て台詞を置いて帰りました。
彼が次に連絡を寄越してきたのはそれから半月後でした。その時に聞かされた話は想像を大きく外れて絶句するしかないものでした。
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